人道支援の国際基準「HAPとスフィア」

10月20日~26日、韓国・ソウルで行われた「スフィア・プロジェクト」のトレーナー研修に、スタッフの高橋麻帆が参加しました。

 

聞きなれない言葉かもしれませんが、「スフィア・プロジェクト」とは、世界各国で災害支援や人道支援を行うNGO/NPOが活動する最低基準の指標として利用しているもの。援助を行う上で前提となる被災者の権利などの心構えや、水と衛生・食料と栄養・避難場所&居住区と物資の配布・保健活動などのパート別の具体的な活動指針が書いてあります。

 

東日本大震災では、日本は何十年ぶりかに支援を受ける側の立場になりましたが、国連機関を含めた海外の団体との協力体制には、いくつかの課題が残りました。ひとつは、言語の壁です。PBVの活動現場となった石巻市でも、バイリンガルのスタッフや外国人スタッフの絶対数が足りませんでした。

そして、「緊急時には何を優先して活動するのか」の判断が流動的に行われたことも課題でした。もちろん緊急時の現場で、臨機応変に対応を進めたことは評価できる点ですが、海外の団体のほとんどはその決定のスピードに追いつけませんでした。共通する基準やスケジュールが立てられず、目標や優先順位の設定が難しかったからです。


左が韓国・ソウルでの研修に参加した高橋麻帆

 

そういった事情もあり、国際NGOのスタッフらに「スフィア・プロジェクト」と「HAP基準(*)」の研修を行う動きが始まりました。PBVも、東北での活動や「災害ボランティア・トレーニング」に助成協力をいただいているCWS(Church World Service-Asia/Pacific)からのお誘いもあり、昨年9月のバンコク、今年2月の東京でのトレーナー養成研修に参加してきました。

 


(*) HAP基準
「スフィア・プロジェクト」と並ぶ人道支援の国際基準。主に、被災された方々への説明責任など、支援団体の組織のあり方と、支援活動における受益者(被災された方々)との関係の築き方などの指針が記されている。


HAPとスフィアを推進する日本のNGOワーキンググループ

 

そして、今回はその「スフィア・プロジェクト」を韓国にも広めようという目的。高橋はトレーナーの一人としての参加、韓国からは7団体のスタッフ、日本からもそのほか石巻でも活動するJENのスタッフが参加し、5日間に渡る研修が行われました。

韓国の団体の多くも、これまでは途上国で活動する前提と思っていたようですが、東北での経験を共有することで、韓国国内での必要性についても理解が深まったようです。

 

もちろん、基準だけで支援が上手くいくわけではありません。ただ、被害が大きければ大きいほど、たくさんの人と団体が連携し、役割分担をして動くことが必要です。そこには、もちろん外国人・海外の団体も含まれます。PBVも、インターナショナル・ボランティアの受け入れなど積極的に行ってきましたが、もっともっと日本全体での底上げが必要だと思った韓国出張でした。