8月7日、震災当初から石巻の人々を守り続けた洞源院の避難所・解散式が行われました。
大災害の中、「人のつながりと助け合いこそが人を救うことができる」 洞源院はそんな大切なことを教えてくれた避難所でした。
解散式へのご招待を受け、今回参加させていただくことになったのは、ボランティアコーディネーターの平山雄貴。お付き合いのある石巻の方々やボランティアの間では、ちょっとした名物キャラクターです。
彼自身が初めて石巻へ入ったのは、3月26日のこと。町中も、あからさまな震災被害が広がっていた時期です。先に入ったメンバーが洞源院周辺の泥かきを行った後で、食材や支援物資などを運ぶ作業に加わりました。
「当時は、洞源院の周辺もガレキや泥が凄くて。5月にも一度行ったけど、今回は本当に見違えるようにキレイになってて驚きました。」
洞源院は、由緒あるお寺。四季とともに美しい彩りを見せます。渡波地区の高台にあり、そこから見渡す町は津波で全壊・半壊の被害を受けた地域です。住職の小野崎さんはすぐに避難場所をしてお寺を開放し、多い時には約400人がここで避難生活を続けていたそうです。
県内の被災地の中では、建設が遅れていると言われる石巻でも、仮設住宅への入居が進み、避難所が一つずつ解散を迎えます。洞源院もその一つ。解散式には、ここで避難されていた方々や子どもたちをはじめ、関係するボランティア団体、また仙台など遠方からキリスト教の団体なども集まってきました。「人々が助け合うのに宗教は関係ない」それが小野崎住職の考え方のようです。
洞源院には、共同生活での「約束事8ヶ条」と呼ばれるものがあります。
1.みんなで元気に挨拶をしましょう
2.履き物を整え、整理整頓・清潔に心がけましょう
3.何事もお互いに譲り合い、協力し、マナーを守りましょう
4.天気のよい日は、日光浴と散歩をしましょう
5.わずかな物でも分け合いましょう
6.自分のできることは何でも手伝いましょう
7.神仏を敬い、感謝の心を常に忘れないようにしましょう
8.生活に必要な規則を作り、皆で守りましょう
洞源院の子どもたちは、この約束をちゃんと守っています。
震災で親を亡くして孤児になってしまった子もいます。
それでも、大きい子は小さい子が重い物を持っていれば手伝います。
脱いだ靴はちゃんと揃えて置きます。揃ってなければ、その靴を揃えます。
1人ぼっちの子を見つけると、遊びの輪に入れてあげます。
それぞれ、元々は知らない子たち同士。でも、自然と助け合っていました。
洞源院の子どもたちは、人懐っこくていたずら好きです。
「どこのお坊さーん?」との洗礼を受けた平山くんは、「きんちゃん」「みそぱんつ」「ひらやま」「メガゴリ」「しょういちくん」「クソおかまへび」と数々のあだ名を付けてもらい、ちょっとした人気者に。
叩く蹴るの子ども攻撃を受け、もみくちゃに遊んでもらった挙句、女の子たちからは「強く生きなきゃだめだよ」と温かい励ましの言葉。
洞源院の子どもたちは、たくましく生きています。
さて、和やかな雰囲気の中、解散式が始まりました。
みんなでお経を読んだ後は、住民の方々からの感謝の言葉。「避難民を代表して、胸を張って挨拶するのも何かおかしな感じですが、・・・」温かい笑いに包まれます。
小野崎住職は、住む場所が変わっても、人はどこでも共同生活の中で生きている、約束事8ヶ条の意味を語りかけます。
子どもたちからお花を受け取った住職の奥様。お花もマイクも離しません。「私たちが出会ったのは・・・」と、なぜか馴れ初めを話し始めます(笑)
「困ってる人がいたら、とにかく助けに行っちゃうの。そんなところを好きになったんだけどね。」
聞いている方が照れますね。
小野崎住職は、ここで避難生活を続けていた方々のことを家族のように思っています。「困っていることはないか?大変だったら、いつでも洞源院に来なさいね」と、時間があれば、仮設住宅へ移った一人ひとりを訪ね歩いていらっしゃるそうです。
人は助け合いの中で生きていく、ということを教えてくれた洞源院の解散式。
別れ際、涙をこらえ切れない平山くんのもとに、子どもたちが集まってきます。
見送りながら歌ってくれたのは、式の中でも何度も繰り返された南こうせつの「まごころに生きる」。
洞源院の子どもたちは、石巻の希望です。
photo: Shoichi Suzuki, Yoshinori Ueno