1月14日,15日、パシフィコ横浜を会場に行われ、2日間でのべ1万1,500人が集まった「脱原発世界会議」で、ある取り組みが行われました。この「ふくしまの部屋」では、福島県内から、また関東近県で避難生活を続ける方々、彼らの声を聞き自分にできる支援を探りたいという参加者が集まり、テーマごとに分かれて輪になり、ワークショップが行われていました。
福島県外で避難生活を続けるのは、関東や新潟、そのほか大都市を中心に約6万2千人。福島県内の違う市町村に避難されている方々を含めると約10万人とも言われています。
双葉町の自治体機能まるごと移転し、マスコミでも有名になった埼玉スーパーアリーナ(後に埼玉県加須市に移動)や、東京・江東区のマンションなどある程度まとまったグループで避難生活をしているケースもありますが、知人を頼ったり、自力で住む場所を探した方々を含めると、人数や住所の把握でさえ追いついていないのが現状です。
その一人ひとりが、避難先・避難元の自治体から受けられる支援や行政サービスなど、様々な情報を必要としています。また、自分も子どもも新しい環境に馴染めない、境遇や方言も違って悩みを打ち明けられないなど、ストレスを抱えての生活を送っている方もたくさんいらっしゃいます。それでも、「どこに誰がいるのか分からない」、つまりお互いに顔の見えない状況下で、その対策もまた見えなくなっているのです。
「ふくしまの部屋」は、さまざまな立場の人が集まり、ゆっくりと話をし、聞き、一人でも多くの顔の見える関係を築くことが目的でした。たくさんのマスコミも来た会議でしたが、一部は報道関係者の立ち入りを禁止したり、ファシリテーターとしてこの部屋を運営したスタッフも、何日もかけて安心感があって話しやすい環境づくりを心がけていました。
模造紙には、たくさんの「声」が貼り付けられていきます。福島の方、避難されている方、支援したい方、これまで見えなかった事実や葛藤が、少しずつ目に見えるようになっていきます。怒りもあります。迷いもあります。嬉しかったこともあります。それぞれの「声」を受け止めて、お互いがこれからしっかりつながっていこう、そんな大きな第一歩を踏み出した参加者の方も多かったと思います。
ピースボートが行う石巻市の仮設住宅入居者支援でも感じることですが、「これをやったら全員に正解」という活動はありません。人に対する支援は、相手によって違います。だからこそ、機械的に行うのではなく、人の手で行うことが大切なんだと思います。
「ふくしまの部屋」で学んだこと、知ったこと、出あった人との関係を大切に、これから長く福島支援を続けていきたいと考えています。
photo by 佐藤秀明、脱原発世界会議