「“ありがとう”からはじめよう!それがきっかけでした」と語ってくれたのは、南相馬在住の須藤栄治さん。福島原発から20キロ圏にある南相馬市は、3月11日の震災で大きく傷つきました。住民の方々の心には、いまも多くの悲しみや怒りがあるでしょう。たくさんの別れも経験しました。そんな中、みんなが手を取り合い、つながることで郷土の誇りを取り戻したいと活動するのが「つながろう南相馬」です。
「つながろう南相馬」との出会いは、「福島子どもプロジェクト2011」の実施を検討していた頃。震災後、本業で南相馬を元気づけたいとダイニングバーの営業を再開した須藤さん、そして同じく自分のクリーニング店を再開させた高橋美加子さんという、二人のメンバーとお話したことがきっかけです。
この頃、福島県内では情報の混乱も影響し、聞く人聞く人によって意見が違います。それでも、共通しているなと感じたのは、「子どもたちが心配だ」ということ。子どもも両親も大きなストレスを抱えての生活でした。
ピースボートで、どんな支援ができるのか、と色々相談や提案をしていたところ、高橋さんをはじめその場にいた地元の方々の目が輝き出したは「世界を回る船があるので、子どもたちを船に乗せて連れて行くことなら出来ます」と言った瞬間。
「震災があって、原発事故があって大変な1年だったけれど“あの夏は楽しかったよね”って言える思い出になる。夢がある。両親にとっても、安心して子どもたちを送り出す先があれば、将来を考える時間と余裕が持てる。絶対やって!」と。
お金もかかるし、わざわざ海外へ一時避難というのは、南相馬の厳しい現実に即していない提案かも、と思っていた私たちにとっても目からウロコの反応でした。この一言がきっかけになり、実現したのが「福島子どもプロジェクト2011」でした。
「子どもたちが今後の南相馬をつくる。私たちが受け取ってきた南相馬をちゃんと子どもたちに渡せるように、大人や若者が将来を考えていま動かなきゃいけない」
バラバラになった大人や若者をもう一度一つにつなげるため、「ありがとう」という感謝の言葉から始めた「つながろう南相馬」。そんな魅力に惹かれ、多くの著名人やアーティストの方々も彼らの元を訪れ、ボランティアで講演やイベントを開催しています。
大変な状況をお手伝いしたいと訪問しながら、私たちも逆に元気をもらっているような励まされる気持ちになります。南相馬の大事なパートナー、これからも「一緒に」活動していきましょう!
photo by Kazushi Kataoka