福島大学ユースプロジェクト 石黒美咲さんより

私たちは「脱無関心」というテーマで活動してきましたが、言ってしまえば、私自身も無関心の部類だったと思います。

福島に住んでいながら原発があるかどうかも意識しないぐらい、原発があまりにも日常に溶け込んでいて、それに対する議論や自分の考えすらもないに等しかったです。事故が起こった直後は恐怖心も強かったのですが、だんだんとその気持ちも薄れ、普通に生活できていることが嬉しいとも感じていました。

しかし、ピースボートに乗船し、県外の多くの方々や世界のいまに触れ、それではだめだと気が付きました。復興のためにまだ頑張っている人がいる、まだ辛い思いを抱えている人がいる、3.11について考えてくれている人がまだたくさんいる。自分は何をすべきか、何をしなければいけないのか。気付けばそればかりを考えていました。

「福島を知ってほしい」と最初から思っていたわけではありません。プロジェクトを進めていく過程で、ある違和感を何度か受け、そう思うようになりました。その違和感というのは、原発事故は福島で起こっているのに、世間では福島に関する話題が少ないことです。

寄港地で福島の現状について証言させていただいた場でも、そのことを何度か感じました。参加してくれた人のほとんどは原発がこの先どうなっていくのかという話には興味を持っているようでした。けれど、事故が起こってどんな問題が生じたとか、いま福島がどんな状況にあるかという当事者側の状況をなかなか想像できていないように感じました。

また「PEACE & GREEN BOAT 2012」では、福井県の原子力センターを訪れました。そこでもたくさん思うことがありました。

福井県の人々は原発が存在するから生活ができていて、そのような意識から、原発は福井県にとって「安全でなければならないもの」であると言います。原発の恩恵を受けて生活している人々にとっては、原発があるべきかないべきかの議論の場に参加する状況にありません。原発は最初からあってもらわなくては困るものなのです。そういった人々を議論に加えないまま、原発をなくすといった決断はできないと思いました。

原発に頼らない生活をと考えた時、一体何が生活を支える代わりになるのか、当事者に寄り添った議題と解決策の話し合いを、ぜひ当事者と共にやってほしいし、やっていきたいと思いました。

当事者側の意見や複雑な気持ちを汲みながら、原発をなくしていけるのが一番良いというのが私の考えです。その実現にはかなりの時間を費やさなければならないし、問題が複雑化し考えなければいけないことも増えるでしょう。

ですが、そのプロセスが「脱原発」と訴えるには必要なのではないでしょうか。原発事故によって辛い思いをしている人々や複雑な思いを抱える人々、原発に依存しなければ今の生活を脅かされる人々、そのような立場にいる人々の声に耳を傾けてみてください。

プロジェクトを進めていくうちに、県外の人でも興味を持って一緒にプロジェクトに参加してくれた仲間がたくさんできました。彼らの提案もあって、実際に福島に行って、いまの様子を目で見たり、福島の人々の話を直接聞いたりといったツアーを計画したいと思っています。こうやって遠くからも福島に興味を持ってくれるのが嬉しいし、同じような思いを持った人がさらに増えていってほしいと思います。

また、私のような当事者でありながら積極的に関心を持たなかった人。まだたくさんいると思います。その一人ひとりが、私のように「脱無関心」になっていってくれることで、よりよい解決策を話し合っていけるのではないかと思っています。

One Response to 福島大学ユースプロジェクト 石黒美咲さんより
  1. めぐ より:

    原発立地自治体にはカネが落ちている。麻薬中毒患者と同じです。
    原発をなくしても一定期間交付金と同額のカネを渡し、立ち直ってもらう軍資金とすればいい。脱原発が実現出来なければどのみち支払われるカネです。「脱原発が実現出来なかったと思えば」無駄金ではない。