石巻みどころ情報

てらっぱだけ再開物語

2012/12/12



20mとも言われる津波に襲われた旧雄勝町。
硯などに加工される雄勝石の産地として知られた町の中心部は今、建物の残骸を除いて何も残っていない。
変わり果てた地区を見下ろす高台で一軒の店が営業を再開したのは9月。地元出身の千葉正人さん(60)が営む手打ちそば屋「てらっぱだげ」だ。
店名の由来は「寺の畑」の方言。かつて一帯が寺の土地だったことから名付けられた。

店は消防士だった千葉さんが5年前に早期退職して開業。本格的なそばが食べられると評判を呼び、遠方からも客が訪れるほど繁盛していた。
震災で母と店を失った千葉さん。再開を後押ししたのは200件を超える客からの励ましの電話やメールだった。自分のそばを楽しみに待ってくれている人がこんなにもいる。その事が、震災で摩耗し、折れかけていた心に染み入った。




店の再建開始は去年6月。予算も限られ、新しい店は自力で建てられるログハウス風の建物を目指し、柱には津波で枯れた裏山の木を使った。大勢のボランティアや大工の手伝いもあり「3年は覚悟した」という店の再開は1年ほどで実現した。




店の場所については悩まなかった。
千葉さんの腕を見込んで、別の地区で店をやらないかと誘ってくれる人もいたが、地元を離れたくなかった。

雄勝の将来が厳しいと言われていることはわかっている。
「若い世代は雇用を求めて雄勝を離れ、残るのは高齢者ばかり。集落の維持すらままならなくなるだろう」。
千葉さんは恐ろしいほど冷静に分析している。

店の再開をきっかけに、地区に人が戻り集落が再生される。
そんな甘い夢にすがるつもりはない。



けれども千葉さんはここでそばを打ち続ける。ここが自分の町だからだ。
「雄勝に生まれ育ち、そして死んでゆくのさ」、千葉さんが微笑む。
その肩越しの窓の向こうには、あの日が嘘のように、穏やかな雄勝の海が広がっていた。



てらっぱだげ

住所   宮城県石巻市雄勝町雄勝船戸新明10-10
電話   0225-57-3222
営業時間 11~18時頃
定休日  火曜・水曜定休

ピースボートセンターいしのまき
記者ボランティア ヨッシー