福島大学ユースプロジェクト 佐藤友里菜さんより

地球一周、そして日韓を巡る船旅を通じて、フクシマと世界について、学び、語り、考え続けてきた二人の福島大学の学生たち。2012年12月に東京・日比 谷で行われたNewclear Free Now・市民ひろばのステージで、その経験を発表しました。まずは、佐藤友里菜さんのスピーチ原稿からご紹介します。

 

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こんにちは、福島大学3年の佐藤友里菜です。

8月24日から11月16日までの85日間、そして12月1日から9日までの9日間、ピースボートのクルーズに乗船し、「福島大学ユースプロジェクト」に参加してきました。

ピースボートとは、約3ヵ月間の地球一周を通して世界と直に触れながら、貧困や内戦など、各国に潜むそれぞれの問題を地球規模課題として考えることを目的としたNGO団体です。そこで立ち上げられた「福島大学ユースプロジェクト」には、福島大学から私たち2人の学生が参加しています。

このプロジェクトの目的は、福島からの声を世界に発信し、私たちも世界を巡ることで何かしらの学びを得るというものでした。福島からの声を届けるとは、3.11から1年半が過ぎた“いま”の福島の現状を伝えることであり、福島に現在も住んでいる人々が抱えている問題や、どんな状況が福島で起こっているのかを伝えるというものです。

福島の状況を伝えるため、私たちがやった活動は、船上と各国の寄港地でしたことの2つに大きく分けられます。船上では、より広い層の参加者に伝わるように、勉強会やワークショップ、劇などをしました。合計約20回の企画をし、毎回たくさんある福島の問題から何か一つに焦点を当て現状を伝えてきました。寄港地では、メディアの取材や地元の方々と交流することで情報発信をしてきました。

また、プロジェクトのもう一つの目的だった私たち自身の学びについては、クルーズに乗船してくる水先案内人(洋上講師)にインタビューをする、各寄港地でアンケートによるものでした。また、寄港地の人との交流のなかでその国の人たちの考えや福島や原発に対する思いを聞く機会もあり、たくさんの人の声に耳を傾けることで、違った視点から3.11を考え直すことができました。

ここからは、具体的に発信してきたメッセージを紹介します。

福島では、放射線によってもたらされた問題で、県内外へ避難を迫られている人々がたくさんいますが、そういった人々のなかには経済的な理由で避難できなかったり、避難したとしても避難先での生活がうまくいかなかったり、故郷に対する思いと現実との間で苦しい思いをしていたり、避難がコミュニティーの崩壊にもつながってしまったなど、たくさんの福島の方が悩み苦しんでいることを発信してきました。

ほかにも、除染活動が日常の一部になっている、放射線量が天気予報と一緒に当たり前のように毎日報道されている、公園や学校の真ん中に線量計が置かれている、風評被害で福島の生産物の需要がない、観光客が激減して観光業が追い込まれている状況があるということを伝えてきました。

これらは、放射性物質が降り注がなければなかったはずの問題です。また一方で、放射線の問題を受け入れ、これからも福島で生きていくために歩きだしている人がいるということも事実です。

プロジェクトを通じて、私たちから情報を出すこと、相手からの情報を受け入れることをしてきましたが、相手の話に耳を傾けることが本当に大切なんだということを学びました。当事者とそれを外から見ている人の間には大きなギャップがあると感じたからです。

日常にまで入り込んだ福島の悩みは、福島に住んでいる人にしか分からないことだろうと思います。放射性物質が降り注いだと報道されたとき、福島の人はどれだけ不安になり、それ以降もどれだけの不安を抱えながら福島に住み続けているのか、そういうことは当事者になってみないと分からないと思います。

また、原発立地地域を持つ福島ですが、立地地域周辺に住んでいた人の気持ちもその人たちにしか分からないことだと思います。なぜ、原発を受け入れることにしたのか、いま原発を無くすとしたらその人たちはどうなってしまうのか。

当事者の声に耳を傾けてください。原発がもたらす危険や放射性物質によってもたらされた問題は、当事者たちが一番分かっているし、一番苦しんでいます。しかし、なぜそういう人たちが声をあげないのか、苦しいと言わないのか。その理由を考えたことはありますか?

変えたいことがあるなら、まずは福島の現場を知ってください。本当の解決は、そこからしか始まらないと思います。当事者と当事者を周りから助け応援しようとする人の意識の差が小さくなるほど、解決につながると私は思っています。

もっと福島の声に耳を傾け、その内情を知ってください。福島では放射性物質が放出されなければ起こらなかったはずの非日常が日常となっているのです。原発事故は1年半以上前のことですが、その影響は今もなお続いているのです。福島の問題が解決されない以上、3.11は終わらないことを忘れないでください。

私たちは、これからも福島に寄り添った目線で、問題と向き合っていきたいと思います。ピースボートに乗って、現場を知ることや、当事者の声が持つ影響力の強さを感じました。だから福島の人にも声をあげる大切さを伝えていきたいと思います。

3.11に対する問題意識の行方は当事者である福島の人にかかっていると思います。問題の解決をめざすなら、声をあげると同時に相手の声を聞くことが重要だと思います。この発表を聞いて、福島の声に耳を傾ける人、福島から声を発信する人が何人かでも増えたくれたらと思います。

繰り返しになりますが、3.11はまだ終わっていません。福島では事故がなければなかったはずの非日常が日常になりかけています。それを知ってください。脱原発を目指すことも大切だとは思いますが、私たちは、すでに起きた原発事故がもたらしたいまの問題の解決を目指してほしいと思っています。

この場を通じて、私たちのメッセージが少しでも伝われば幸いです。
ありがとうございました。

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次回は、もう一人の参加者、石黒美咲さんのスピーチを紹介します。

 

 

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