画集に描かれた石巻

今日は石巻市東中里にあるお宅での清掃作業の様子をレポート

このお宅は、前日にも2階部で倒れた家財道具の片付け清掃をやらせて頂きました。

今日は残りの1階部とお庭の泥出し作業です。

装備や道具を確認、泥は床下まで入り込んでいるため、床板も撤去してからのスタートです。

さあ、張り切っていきましょう !


早速作業開始

床下は、桟が走っているのでカクスコ(角スコップ)などで一気に出すことが出来ません。

なので園芸用の小さなスコップを使って泥をかきだしていきます。

手の届きづらいところなんかもあって意外と大変。しかも、泥の中には釘やガラスなども入っているので気をつけながら。

すこしづつ、すこしづつの地道な作業です。

庭も、津波被害を耐えて生き残った植物を痛めないように丁寧に泥をかき出していきます。

いっぱいになった土嚢袋はどんどんトラックに積んで集積場まで運びます。

大きなダンプが通れない住宅地では、軽トラックにアオリ(※)を立てて、たくさんの土嚢袋を積めるように工夫します。

※アオリ平ボディのトラック両サイドと後ろにコンパネで壁を作り、より多くのものを積めるようしたり、積荷が落下しないようにするためのもの。

いくら東北の地とはいえ、さすがにここ最近は暑いです(;)

作業中は流れるように汗が滴り、体力の消耗も激しいので、熱中症や集中力切れが原因で起る怪我や事故の予防のため、1時間に1度は必ず休憩を取るようにしています。

みんなの様子や、作業の進行を見計らって休憩していると、このお宅のお母さんから飲み物とお菓子の差し入れが。

冷えた飲み物に感激ご好意に甘えて遠慮なく頂きました。ありがとうございました

休憩中、頂いた飲み物で喉の渇きを潤しながら、震災当日の話を少し聞かせていただきました。

このお宅は、海から直線距離にしておよそ3kmほどの場所ですが、急北上川を遡上する津波によって、ちょうど肩のあたりまで水がきたそう。

川からの遡上や地形によっては、海岸線から15kmほども離れた所まで津波が来た地域もあるそうです。

15kmを東京で考えた場合、仮にお台場あたりを基点に計算すると、大体池袋くらいまで水が来た事になります。

当日、家を襲った水もなかなか引いてくれず、家族全員で2階に避難し、数日後にようやく自衛隊のボートによって救助されたそうです。

さて、休憩も終わり作業に戻ります。聞くと、このお宅ではもうすぐお子さんの家庭訪問があるとのこと。

それまでになんとかこの1階を使えるようにしたいと皆の作業にも熱が入ります。

園芸用スコップでも手の届かない所にある泥は床下に潜り込んでかき出します。

見えますか写真手前の床板の下から足が(笑)。

アオリを立てたトラックもそろそろいっぱい。

最後に泥で汚れた室内と道路を掃除します。

この作業に当たったチームは2泊3日の短期メンバーなので、作業は今日で最後。

作業時間内に完了できなかったことを悔やんでいましたが、残った分については残るメンバーや新しく来てくれるメンバーが引継ぎ、ピッカピカ☆にしますのでご安心を

そして、お別れの際、とっても素敵なものを見せていただきました。

お母さんがおもむろに持ってきてくれたのは、おじいさんが描いたという画集。

その絵のほとんどが石巻市の風景だそうで、そこには四季折々の美しい石巻の風景が描かれていました。

そしてなんと最後には、ボランティアのメンバーに画集のポストカードをいただきました。

ボランティアとして訪れていたアルゼンチン出身のシャニーナさんは「一生の宝物にします」とすごくうれしそう。

こんな風に、日々の現場にはいくつもの出会いがあります。

もちろんボランティアのみんなは出会いを求めて来ているわけではありません。

ですが、共に汗を流しながら作業をしていると、自然とコミュニケーションが生まれ、交流をして仲良くなり、最後には「綺麗になった石巻に帰っておいで」と見送ってくれます。

ここに住む人たちの心には、おじいさんの画集にあったような、美しい石巻の風景が残っているのだと思うと、今この街にある泥や瓦礫を取り除き、一日も早くもとの街の姿を取り戻し、綺麗になった石巻に帰ってきたいと強く思った今日の作業でした。

ALL PHOTOS BY [CHIGA KENJI]