【防災・減災】 外国人のための防災・減災訓練

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日本で暮らす外国人は約220万人。国籍別に人口比率が多い順では、中国、韓国・朝鮮、ブラジル、ベトナム、米国、ペルーと続くようです。ひとくちに「外国人」と言っても、何十年・何世代にも渡って生活を続ける永住・定住者もいれば、仕事の出張や留学でやってきた在住年数の浅い人もいます。外国人旅行者を呼び込むインバウンドの動きも加速し、今年1年間の訪日外国人数は2,000万人に達しそうです。

違う文化・生活環境で育った外国人にとって、日本に馴染むのは大変なことです。あなたが「今日から別の国で生活をスタートする」と考えれば、やっぱり分からないことだらけのはず。ただ、日本で暮らすには「災害が多い」という特徴を頭に入れておくべきかもしれません。

 

2020年の東京オリンピック開催決定を受けて、東京都では「外国人おもてなし語学ボランティア」の募集が始まっています。これは街中の道案内などの役割を担うボランティアですが、これとは別に首都直下型地震などの災害に備えるための「東京都防災(語学)ボランティア」の募集も行っています。

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東京都民に全世帯配布された「東京防災」。英語版は、都内の国際交流協会などの施設などでもらえるほか、中国語韓国語版はWebからダウンロードできます。

 

「防災(語学)ボランティア」は、災害時には各市区町村などからの要請に応じて複数言語で電話相談を受ける「多言語支援センター(呼称は地域ごとに異なります)」を手伝ったり、災害情報の通訳・翻訳を担うボランティアです。外国人避難者の多い避難所に出かけていって、張り紙の翻訳をしたり、相談コーナーを担うこともあるでしょう。

災害時の困りごとの相談に乗るには、単に「言葉ができる」だけではなく、災害に対する基本的な知識も必要になりますよね。そこで、この「東京都防災(語学)ボランティア」は、年に何度か研修を受け、また大使館や外国人住民への防災・減災訓練の通訳や運営サポートで練習を重ねています。PBVでも、昨年度からこの研修づくりに関わってきました。

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また、災害時に行政が行う「公助」は都道府県レベルではなく、市区町村単位の地域防災が基本です。外国人住民が多い市区町村は、それぞれ独自に同じような災害時の語学ボランティアを募集し、育てていく取り組みを始めています。各国の約80の大使館・領事館がある東京港区でも「国際防災ボランティア」の募集が始まりました。国際交流協会のある市区町村では、ここがその機能を果たしていることが多いようで、長い歴史のある東京都武蔵野市の国際交流協会は、対応できる言語も多く、先進的な取り組みもたくさんあります。

積極的に取り組んでいる災害時の語学ボランティアであればあるほど、日本国籍でバイリンガルのボランティアだけでなく、日本語が第二言語、第三言語という外国人ボランティアも多くいます。チーム内で文化や生活環境の違いを共有した上での対応ができるので、さらにきめ細かい一人ひとりへの対応が可能になっているようです。

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以前にも、外国人向けの「災害ボランティア入門」をご一緒した難民支援協会では、年間1万人を越える日本への難民申請者らの言語に合わせて「ビルマ語」「トルコ語」「アムハラ語」などでの災害ハンドブックを作成するなどの取り組みを行っています。難民申請者は、そもそも日本での滞在期間がまだ短く日本語ができない割合が多く、また行政や大使館によるサポートを受けづらい立場。外国人の中でも、民間やNPOによる支援が命綱だったりします。

 

最後に、先月開催された「第18回自治体とNGO/NPOの連携推進セミナー『多文化共生社会における災害時支援を考える』」で、ご一緒した群馬県大泉町の取り組みを紹介します。ここは、ブラジルやペルーからの定住者を中心に人口の16%以上が外国人という町です。ずっと「外国人はいつか母国に帰るお客様」という意識だったそうですが、調査結果から10年以上暮らす定住者が7割にも上ることを知りました。そこで、「同じ町の生活者」なのだらか、町のために活動にもっと参加してもらおうと意識を改めたそうです。

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大泉町には、ブラジルやペルー人向けのお店や施設もたくさん。
PHOTO:Wikimedia Commons

大泉町では、多くのブラジル人やペルー人が語学ボランティアよりもコミットメントの強い「文化の通訳」として育っているそうです。また、多くの自治体が日本の不慣れな外国人を災害時要援護者としての対応を検討する中、大泉町では肉体的なハンディキャップではない彼らは「要“情報”支援者」としています。東日本大震災や昨年の関東東北豪雨への支援活動にも、平時の防災訓練にも外国人チームが参加しています。この町では日本人と外国人を分けて実施するのではなく、同じ「生活者」として一緒に取り組んでいるようです。

 

PBVの東京事務局がある新宿区は、東京都内でも最も外国人比率の多い区。足元の防災・減災を考えるにも、見習うところがたくさんありました。

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